mike-neckのブログ

Java or Groovy or Swift or Golang

あなたは自分の所属している会社の商品を正確に答えられますか?

技術ときおりネタとして開設したこのブログで初めてエンジニアのキャリアについてのエントリーを書きます。

ただし、このエントリーにはかなり偏った次のようなバイアスがかかっていることを私自身が認識しております。

  • 私自身がマルクスの信奉者であるということ(マルクス主義者ではない)
  • 発達障害によるうつ病精神障害者認定されており、人間としてというよりは胃袋として生存可能な程度の障碍者年金で生計を立てている
  • 上記のために1日に働けるのが5時間が限度であり、精神障害者ということもあり、どのような企業にエントリーしても書類選考の時点で落とされる
  • 年々、発達障害と欝の程度がひどくなっており、既にまともな人間ではない(ちょっとしたことでイライラして壁を殴るなどしており、右手を負傷していたりする)
  • 子供の頃から身体の発達が遅れており(小学生の時に1年間で身長が1cm縮んだこともある。ただし今は正常な大人の身体を持っている)、意見を述べて人と対立し議論することに圧倒的な恐怖を感じる(子供の頃は議論にはならずに物理的な応酬での決着となるため、意見の不一致が即身体・生命の危機を意味していた)
  • 上記の状態から、企業、社会、資本主義に嫌悪感を抱いているが、現時点で資本主義よりまともな制度を思いつかない(思いつく精神力が既にない)し、実現する熱意も能力も力もないので、今ある企業制度、社会、資本主義を受け入れている

なお、このエントリーを書くことで、企業および社会が、私に対してより距離をとるようになり、今後の生活において私がより不利益を被るというリスクは想定している。ただし、リスクに対するなんらの対策もしていない。

また、この文章は思いつく限りを適当に書いた文章なので、まとまってません。あー、こいつはうつ病とか発達障害の人間の書く文章によくある筋の読み取りづらい文章だなと思うかもしれません。しかし、今の僕の精神状態で文章をうまく構成立てて書くことが非常に困難なので、その通りになってしまうため、反論しません。


【2015/11/19 9:57追記】

また、あなたの会社への忠誠心とかそういう心情は切り離して読んでもらいたい。私自身、唯物論者で、心などというものはあくまで物質の結果として現れるものと考えているからである。


質問

さて、本題に戻りますが、「あなた(エンジニア)は自分の所属している企業(フリーランスの場合は自分のウリ)の商品を正確に答えられますか?そして、あなた(エンジニア)はその商品の競争力を付加していますか?」という質問をします。

一応、私もフリーランスではあるので、この質問に答えておくと、私が商品として売ることができるものは、Gradleの知識、Gradleで発生する問題の解決、効率的なGradleの使い方などの知識伝授というのが商品です。ただし、この商品自体だけではそれらを要求する企業が求めるような企業の魅力を向上させることに全く寄与しないため、おそらく貨幣との交換は不可能でしょう。したがって、私自身フリーランスとして失格であることも認識しております。

では、みなさんは先ほどの質問に回答できますか?


回答例

私がもうまともではない精神状態でこの回答を考えた時に、いくつかパターンをあげることができたので、それをここに上げておきたいと思います。

  1. 何らかのITとは関係のない商品を売る企業であり、エンジニアとしてその商品の製造・販売等のサポートするソフトウェアの開発・保守・運用を行っている(Netflixなど)
  2. 何らかのIT資産(CPU・メモリ・ストレージ・仮想サーバー)を商品として売る企業であり、エンジニアとしてその商品の開発・保守・運用あるいはユーザーサポートを行っている(Amazon/Google/Microsoftなど)
  3. ITによるサービスを商品として売る企業であり、エンジニアとしてその商品の開発・保守・運用あるいはユーザーサポートを行っている(Twitter/FaceBook/Treasure Dataなど)
  4. ITソフトウェアを商品として売る企業であり、エンジニアとしてその商品の開発あるいはユーザーサポートを行っている(Oracle/弥生/かつてのMicrosoftなど)
  5. 蓄積されたるITノウハウ・業務ノウハウを用いてソフトウェアを開発できない企業へソフトウェアを開発することを商品として売る企業であり、エンジニアとしてソフトウェアの要求分析・開発・保守・運用を行っている(いわゆる上流SIer)
  6. 5と同様にソフトウェアを開発できない企業へのソフトウェア開発に必要なリソースの求めあるいは、協力関係にある5の企業の求めに応じて、人材を調整・調達して販売する企業であり、エンジニアとして求めに応じてソフトウェアの要求分析・開発・保守・運用などを行っている(いわゆる二次請けSIer)

もちろん、上記以外にも、もっともっといろいろな種類の企業があるはずであり、それに応じてもっといろいろな種類のエンジニアがいるものと思いますが、多くは上記に当てはまるのではないかと思います。


定義

さて、唐突ですが、ここでいろいろと言葉の定義をしておきたいと思います。

商品

「商品」とは何なのか、マルクスの『資本論』からかなり雑にまとめた内容を提示したいと思います。

自身が保有しているが消費する価値がないもので、他者にとってはそのものを消費することに価値があるようなもの。それを「商品」といいます。

「商品」が売れるということはどういうことかというと、上記の「商品」がある何らかの飛躍によって、他者からの貨幣に変化することを意味します。

企業および資本の運動

次に企業あるいは資本について定義しておきます。「商品」を作るために必要な資源を調達(これ自体も「商品」の消費)し、労働者の労働力をによって資源を「商品」に変換し、資源の調達にかかった費用および労働者に支払った賃金よりも多くの貨幣と交換をするものを意味します。企業あるいは資本にとってはより多くの貨幣と交換することが至上命題です。(ここで「もの」という言葉を使っています。これは一人でも行えるからです。)

賃労働者

さて、では、この「商品」を作れないものは、どうすればよいのかというと、簡単です。自らの身体と思考と時間とそれらを酷使する権利を「商品」として、それを市場の中で売ります。これは賃労働者とも呼ばれていたりします。

さて、賃労働者の種類についてマルクスはヴィルヘルム・シュルツ『生産の運動』(1843年)から面白い引用をしています。

特殊な才能と超気温準備教育を必要とする仕事は全体として収入が多くなるが、だれでも短期間に簡単に身につく単純作業に相応する賃金は競争が激しくなると下落するし、下落せざるをえないといえる。

マルクス『経済学哲学草稿』(長谷川訳、29ページ)

前者は情報工学を収めてそれなりにプロダクトに関わってきたエンジニア、つまりGoogleFaceBookAmazonMicrosoftなどが欲しい人材であって、後者は「未経験者歓迎」などでIT業界に入ってきている人材であることは想像に難くないと思います。


あなたの回答

ここで、あなたが自分の会社の商品を適切に答えられない場合、これはどんなに情報工学を収めてそれなりにプロダクトの開発に関わってきていても、単なる賃労働者と変わりありませんので、上記の回答例5か6で回答したものとしてください。


企業と労働者としてのあなたの運命

『経済学哲学草稿』の内容に基づき、エンジニアとしてのあなた自身の今後を予測してみます。

なお、その内容とは

激しい競争という前提条件のもとでは、小資本の利益率も小さいから、そんな小資本が大資本に立ち向かえば、小資本は完膚なきまでに叩きつぶされる。

マルクス『経済学哲学草稿』(同、53ページ)

つまり、同じ分野の商品で競争が起こった場合は、特殊なことがない限り大資本が勝つということである。

上記1.の場合

これは主たる商品の運命と共にある。競争に敗れれば、資本の都合により解雇され労働者市場へと投げ出される。また、雇用されている際の待遇についてはこれまた資本の気まぐれ(例えば経営者が商品開発に関係のない部門(IT部門)の待遇を良くする必要がないと考えていれば待遇はよくならない)に依存する。

上記2.の場合

主たる商品がITのものであるため、競争力を高めるために高い資質をもつエンジニア確保のために待遇は良くなるかもしれない。ただし、競争に敗れた場合、労働者は労働市場に投げ出されるものの、元々労働者としての競争力の高さゆえに別の同じような労働にありつくことは容易かもしれない。

これについてマルクスはこう述べている。

資本家の動きを抑えて人びとを助けてくれるものとしては、競争しかない。国民経済学の教えによれば、競争こそは賃金を上昇させてもくれるし、消費者大衆のために商品の値段を下げてくれるのである。

とはいえ、競争が可能なのは、資本が増加し、しかも多くの人の手に握られる場合に限られる。ところで、資本は蓄積によってしか生じないから、多くの資本が生じるには多方面で蓄積がなされねばならない。が、多方面の蓄積は必ず少数者の蓄積へと転じてしまう。資本のあいだの競争は資本のあいだでの蓄積を増大させる…必然の結果として、少数者のもとへの資本の集中という事態を招く。

『経済学哲学草稿』(同、49〜50ページ)

Amazonクラウドの分野でかなり勢いをのばしているのが好例であろう。この分野での競争は、つまるところ資本者の資本の大きさに依存している。したがって、競争にやぶれるような企業にいたくなければ、より資本の大きな企業に属するのがよいだろう。なお、雇用されるかどうかは知らない。

上記3.の場合

2.の場合と同じ。

上記4.の場合

もし、その商品が独占した状況を作る場合、商品の価格については

独占価格こそが可能な最高値を示す。(『経済学哲学草稿』(同、49ページ))

ただし、待遇については、

労働者は、資本家がもうけるときいっしょにもうけにあずかるとは限らない(『経済学哲学草稿』(同、19ページ))

なため、待遇は改善されるとは限らない。あくまで資本者の気まぐれに依存する。

競争のある商品に関しては、上述の通り資本の大きさに依存している。

上記5.の場合

技術の世界では蓄積されたるITノウハウなどはすぐに陳腐化する。したがって、現在商品としているものは数年後には商品でもなんでもなくなる。むしろ負の遺産になるかもしれない。そこで、商品開発に投資できる資本力が勝負をわけるであろう。結局、これまで述べてきた通り、資本力に依存している。労働者については投資される商品開発部門にいれば、労働者としての競争力は得られるかもしれない。そうでない労働者は単なる賃労働者にとどまり、この資本が叩きつぶされた場合には、何をも持たない賃労働者になるであろう。

上記6.の場合

この資本自体の商品が労働力である。したがって、この会社も別の資本者の奴隷であり、所属する労働者も資本者の奴隷である。待遇は

ただの人間として生きていくこと、つまり、家畜なみの生存に見合う最低限に抑えられている。 (同、18ページ)


まとめ

  • 上記1. → 資本者の競争に勤務先の生存が依存するために、労働者としての競争力を高めておいたほうがよい。
  • 上記2.〜3. → 資本者の競争に勤務先の生存が依存する。労働者としての競争力は高いが、それは維持しなければならない。
  • 上記4. → 上記1.と変わらない
  • 上記5. → 商品を開発する資本力があり、商品開発に携われれば、労働者としての競争力は得られるかもしれない。そうでない労働者は胃袋として「自分の人格と能力を相手(資本者)の言うがままの値段で提供せざるをえない」(同、39ページ)。そして、労働者としての再生産は諦めたほうがよい。
  • 上記6. → 5.の後者と同じ。

まとめ2

さて、日本のIT産業といえば、5.と6.が主流だったわけで、ごく最近、5.の中で「特殊な才能と準備教育」(『経済学哲学草稿』(同、29ページ))を有しないまま、たまたま社内政治力に長けた人が、資本者の資本力を自らの力と勘違いして、こんなことを言っている人がいて一部炎上していた(ただし、この人は社内政治力という特殊な才能が非常に優れいていたのかもしれない)。

togetter.com

僕自身としては、この人にあなたの会社の商品は何ですか?と質問したいですけどね…


また、『経済学哲学草稿』の

「労働者を呼び集める産業(引用者註、上記5.と6.)は、労働者を必要なあいだだけは生かしておくが、要らなくなるとさっさと見捨ててしまう。…大産業都市においては、近隣の村から健康な人間と新しい血の供給をたえず受け入れるのでなければ、わずかのあいだに労働人口がいなくなってしまうだろう」

『経済学哲学草稿』(同、39ページ)

にある通り、近隣の村から健康な人間と新しい血の供給を受け入れるようである。

www.asahi.com

この記事を読む限り、日本のIT産業というのは労働力が商品であることを実感せざるを得ない。


そして、自虐でもあるが、うつ病発達障害をもつ精神障害者である私は日本の企業にとって労働力ではないので、不要なものとして見捨てられているのである。


おわり


【2015/11/19 9:25 追記】

「資本者」とすべきところを「資本社」としている箇所が幾つか見受けられたので修正した。


【2015/11/19 9:26 追記】

私自身の回答を示していなかった。私が最初の会社にいた時は6.つまり労働力を商品とする会社であった。むしろ、6.の会社において自社の商品が何であるのか理解できていなかった。もちろん一次請けということもあったが、その場合でも労働力をかき集めなんとか納品にこぎつける会社であった。私自身の判断力は遅く、かつうつ病を発症してからは多分あつかいの面倒な社員だなと見捨てられていたのではないかと思う(もちろん表向きは体調を気遣うのだが、資本者としては不要な存在)。次の会社は5であろう。しかし、たまたま6.のような案件を引き受けてしまったため、同じ轍を踏んだ。


【2015/11/19 9:33 追記】

日本がアジア近隣からあらたな絞るための血を受け入れるというのは、まさに日本が足りないと言っている「IT技術者」が「働く動物でしかなく、ぎりぎりの肉体的要求を満たせばすむ家畜でしかない」(『経済学哲学草稿』(同、31ページ))ことを如実に示している。


【2015/11/19 9:43 追記】

文章的にはこれで終わりだが、箔でもつけるために引用で結ぶことにしたいと思う。

「一民族が精神的に自由な民族となるためには、自分の身体的な欲求に隷属していてはならないし、肉体の奴隷であってはならない。一民族になによりも必要なのは、精神的な創造と享受に向かう時間を持つことだ。労働組織が進歩すれば、そうした時間を手にできる。…なのに時間の神クロノスからわたしから奪い取る時間の大きさは、いまなお、盲目的で理不尽な偶然のサイコロ遊びにゆだねられている」

『経済学哲学草稿』(同、31~32ページ。シュルツ『生産の運動』67~68ページからの再引用)